とろける恋のヴィブラート

※ ※ ※

「すごい……」


 御堂のサンプル演奏が終わると、奏は一台の大きなグランドピアノが堂々と真ん中に置かれている部屋に通された。


 高級感溢れるその部屋の雰囲気に、奏は小さく息を呑んだ。


「完全防音の部屋だから、思い切りやってくれ」


「は、はい……」


(すごい……まさか御堂さんの部屋にピアノがあるなんて……)


 丹念に磨きあげられたボディには、鏡のように自分の姿が映し出されている。


「昨日買ってきた。全然弾き込んでないから音が不安定かもしれない」


「え!? 買ってきたって……」


(これってすごい有名ブランドのピアノだよね……? まるでスーパーで買い物してきたみたいな感じだけど、きっと高かったんじゃ……)


「お前がここでいつでも弾けるようにな……ほら、早く楽譜通りに弾いてみろ」


 奏が呆然としていると、気恥ずかしそうにしながら御堂が急かすように奏をピアノの前に座らせた。


(私の……ために?)


「ほ、ほんとに? 嬉しい、嬉しいです……御堂さん」


 自然に顔が綻んで御堂ににこりと微笑むと、その笑顔に応えるように御堂の表情が和らいだ。