とろける恋のヴィブラート

「けど……いずれ日本を離れるつもりなら、中途半端な事しちゃダメよ? あなたのその半端な気持ちが彼女の心を傷つける」


「どういう意味だ」


「青山奏をピアニストとして復帰させるのが本当のあなたの目的? それとも……ヴァイオリニストとしてビッグになったから彼女を迎えに来たの?」


「――――」


 御堂が言葉に詰まって押し黙っていると、瑞希が腕を組んでため息をついた。


「あなたのお父様だって本当はあなたが日本で活動すること、あまり快く思ってないんじゃない? やっぱりオーストリアの本部で――」


「父親の話を俺の前でするな、今は関係ない」


 御堂の低い声に制されると、瑞希は押し黙って言葉を飲み込んだが、ハッと我に返って時計を見た。


「あぁ、もうこんな時間、そろそろ帰るわ……まったく、あなたって相変わらず不器用ね」


 見送りもしない御堂を一瞥すると、瑞希は小さく笑って長い黒髪を翻した――。