とろける恋のヴィブラート

「私も一度会ってみたいのよ、沈黙の天才ピアニスト青山奏さんにね」


「勝手に見せ物にするな」


「あなたが初めて興味を示した女だもの、今度紹介してよね。あなたと私が恋人同士だなんて、マスコミが変な噂流すからこっちも困ってるの」


 瑞希は手で顔を煽ぎながらソファに深々と座った。


「カイリ、あなたのヴァイオリンの音……変わったわね。恋の音色って感じ、好きなんでしょ? あの子のこと」


「は?」


 揶揄しながら瑞希がカイリの頬を人差し指でちょんと突くと、御堂はあからさま嫌そうに眉間に皺を寄せた。


「好きなんて単語、使ったことないな。そんなことより、パリジャンのダーリンが心配してるんじゃないか? 早く帰れよ」


「照れちゃって、可愛いわね。でも……」


 瑞希がソファから立ち上がると、急に険しい表情になって御堂を見据えた。