とろける恋のヴィブラート

「わざわざパリから嫌味を言いに来たのか? 俺は忙しい」


「そんな冷たいこと言わないでよ。今回はお父様に用事があっての一時帰国なの、ここにはついでに寄ってみただけ、無事に生きてたようね」


「相変わらず可愛げのないやつだな」


 奇しくも、瑞希は御堂がオーストリアに住んでいた時の隣人だった。


 御堂と同じようにヴァイオリンの才能があり、石田のもとへ共に通った仲だった。しかし、お互いに癖のある性格だったため、瑞希とは昔から馬が合わなかった。


「石田先生のお見舞いよ、最近調子がいいみたいだから安心したわ。あなたの部屋って相変わらず殺風景で何もないわね、ワインくらいないの?」


「勝手にあがり込んでおいて何言ってんだ。次に予定が入っている、用が済んだらとっとと帰れよ」


 鬱陶しげに御堂が髪の毛をかきあげて言うと、瑞希の口元にうっすら笑みが浮かんだ。


「予定? あぁ! ふぅん……わかった、あの子でしょ?」


 両指を組んで顎を乗せると、瑞希は意味ありげにフフンと笑った。