とろける恋のヴィブラート

「適当に座って」


 柴野の部屋に入るのは久しぶりだった。仕事が忙しかったせいもあったが、柴野と食事をした後、なんとなくマンションへ行く気になれず避けていたせいでもあった。


 綺麗好きな柴野の部屋は片付けられていて、立ち鏡も曇りひとつない。


 潔癖とまではいかないが、御堂とは違い無造作な部分のない部屋に、奏はなんとなく居心地の悪さを感じた。


「今日もお疲れさま、残念ながら明日も仕事だからあんまり遅くなれないけれど……奏の話っていうのは何かな?」


 柴野はネクタイを外し、シャツのボタンを寛がせながら言うと、奏の方を振り向いた。


「……すみません、私……」


「ん?」


 今にも心臓が口から飛び出しそうになるのを何度も嚥下して、奏は意を決して口を開いた。