とろける恋のヴィブラート

 切なさで息が止まりそうになる。胸に押し付けた拳にまでその鼓動が伝わるようだった。


 薄々、自分自身の気持ちに気付いてはいたが、以前はそれを認めてはいけないという自我があった。けれど、今はその塞き止めている理性さえ崩れそうになっている。


(好きになっちゃだめ……だめなのに)


「お前はよく泣くな」


「……御堂さんのせいですよ」


 ヴァイオリンを弾く手を止めて、徐に御堂が奏に近づく。


「こっち向け」


 瞬く度に溢れる奏の涙を温かな親指でそっと拭うと、御堂は目を細めて柔らかく笑った。


「お前の涙の原因が俺だって……?」


 涙を拭う指が頬を撫でて顎に沿う。そして上を向かされると、まっすぐな御堂の視線に囚われた。