「先輩……」


 心配そうな美香の声に奏は、ハッとなって笑顔を作った。


「とりあえず今日は遅いから、一旦今日は帰ろう。ね?」


 時計を見ると、そろそろ終電の時刻が迫っていた。


 不安げな面持ちの美香を元気づけるように、奏は美香の肩にポンポンと肩を叩いた。


「大丈夫、そんな顔しないで」


「はい……」


「片山さんのほとぼりが冷めてから私が話をしてみるから」


 柴野は、腕を組みながらそんな二人をじっと黙って見つめていた――。