「車出してやるから乗っていけ」


 高速を飛ばせば会社まで一時間とかからない。これから駅まで歩いて電車で向かうよりはずっと早く着く。


「いつまでも間抜け面してんなよ、行くぞ」


「あ……」


 腕を掴んだ御堂の手がそのまま下へ下りていき、奏の手をやんわりと握り締めた。


(御堂さんの手……あったかい)


 奏は、ぐいぐいと手を引く御堂の背中を見つめた。そして御堂が与えてくれたぬくもりに、救われる思いを胸の中に押しとどめた――。