とろける恋のヴィブラート

「うっ、うぅ」


「はぁ……貸してみろ、それ」


「え?」


 ため息をついて御堂がゲーム機を指を差しながら言うと、男の子がぽかんとして顔をあげた。


「聴いてみたいんだろ?」


「う、うん!」


 御堂は、手渡されたゲーム機を受け取ると、耳元に近づけて目を閉じた。軽快に流れる音楽を、まるで耳で感じ取るかのように――。


「だいたいわかった。お前、この俺がアドリブで演奏するんだぞ、その場から離れるなよ?」


「うん! わかった!」


「それから……お前、俺の名前を知らないと言ってたな? 俺は御堂カイリ。覚えとけ」


 半分脅しのような御堂の言葉にも、ものともせずに男の子は明るい笑顔で頷いた。


「御堂さん……あの、私――」


「この貸しはでかいからな、覚悟しとけ」


(うぅ……なんかうまくことが進んだようなそうでないような……)


 ピンチを切り抜けたとはいえ、御堂の言葉は奏の胸にもやっとわだかまりを残した。