とろける恋のヴィブラート

 ※ ※ ※

「いつものでいい」


「お、カイリ~! 来るなら来るって連絡しろよ」


 白髪まじりの中年男性がカウンターの向こうから笑顔で手を振っている。御堂は硬い笑顔を作って軽く手をあげるとスツールに座った。


 今夜、御堂はひとりで明日のコンサート前に、顔見知りのマスターの経営するクラシックバーで一息つこうとしていた。


マスターとは昔からの知り合いで、気の置けない仲ではあるが、呑めない御堂にとって彼が職業がバーのマスターというのは、嫌がらせ以外のなにものでもなかった。