とろける恋のヴィブラート

「御堂さん……ですよね? あぁ、すみません、なんだかお恥ずかしいところをお見せしたみたいで」


 柴野は、何事もなかったかのようににこりと笑ってみせた。そんな笑顔に御堂は、面白くないものでも見るように無言で眉を潜めた。


「追いかけないのか?」


「お気遣いありがとうございます。少し彼女とぎくしゃくしてしまって……追いかけるよりも時間をおいたほうが……って、すみません、こんな内輪なことを」


「そこ、どいてくれないか? 店の中に入れない」


 御堂が冷たく言うと、柴野の柔らかい表情がうっすら曇るがすぐににこり顔になる。


「こんなところでご挨拶では申し訳ない。御堂さん、よかったら中で一杯ご一緒しませんか? うちの青山もお世話になっているとのことですし……」


「ふん……泣かせたくせに、保護者面か」


「あはは、手厳しいですね」


 柴野は、御堂の嫌味にも屈せず御堂を店の中に促した。