とろける恋のヴィブラート

「み、御堂さん……?」


「……へぇ、このバーを知ってるなんて、お前もなかなか目ざといやつだな」


 あえて泣き顔には触れずに、御堂の態度は相変わらずぶっきらぼうだった。そう思うと何故か余計に泣けてきて、奏は今にも歪みそうな顔を伏せた。


「失礼します!」


 奏は、ぺこりと頭を下げてそれ以上言葉を交わすこともなく、御堂の脇をすり抜けた。


「奏! 待ってくれ! まだ話が――」


 奏が走り去ったあとをすぐ追うようにして、柴野が慌てた様子で店から出てきた。


「あなたは……」


 柴野は驚いて目を丸くし、目の前の人物が御堂カイリだということを認識するとバツが悪そうに苦笑いした。