進行方向をまっすぐ見つめる横顔は相変わらず端整だったが、少し憂いを帯びた陰りが見えた。そして奏はじっと黙って御堂の言葉を待った。


「石田先生は癌なんだ」


「え……?」


 先程、楽しく会話をしてきたばかりだというのに、奏はその病名を聞いて言葉を失った。


「いや、悪い……お前には関係ないことだった」


 御堂は冷たく言うと、再びいつもの御堂に戻ってしまった。


(御堂さん……自分の辛さを誰にも見られたくないんだ)


 奏は、そう感じ取ると石田の病気についてそれ以上触れるのをやめた。