とろける恋のヴィブラート

「話は変わるけど、城海音楽大付属切ってのピアニストというのは、君だったんだね」


「え……?」


 石田の思わぬ発言に奏は目が点になった。


「ピアニスト……って?」


「まぁ、カイリは滅多に人に興味を示さないけど……あの時、毎日のように音楽室から聴こえてくるピアノの演奏者がずっと気になってたようだよ」


「……でも、私、御堂さんに初対面で下手くそって言われたんですよ」


 ぼそっと奏が言うと、石田が突然声を立てて笑いだした。


「あはは、まったく……カイリは不器用だな。でも、下手だったら気になる必要もないだろう? きっと彼なりに何か思うところがあってそんなことを言ったんだと思うけどな……まぁ、あんな性格だけど、音楽に関しては絶対に手を抜いたりしない自分にも厳しい男だよ」


 石田はそう言いながら奏にお茶を差し出した。それを受け取ると、じんわりと手のひらに温かみが広がった。