とろける恋のヴィブラート

「やがてカイリは私ではもう役不足になるくらいに腕が上達してね、学校に通うよりも世界中でヴァイオリンを弾いていたいと言って、世界各国で演奏するようになった。しばらくして私も講師を引退して日本に帰ってきたんだ」


「そうだったんですか……」


「もう二度と会えないものかと思っていたけど、カイリが十七の時にひょこり日本に帰国してきて、城海音楽大付属の高校に一年間通うことになったんだけどね、残念ながらその頃から私は体調を崩して入退院の繰り返しの生活をするようになってしまって……今ではこの有様さ」


 石田はハァとため息をついて肩を落とした。


 そして心配そうに見つめる奏と目が合うと、すまないね、といったふうに小さく笑った。