とろける恋のヴィブラート

「彼は、私がオーストリアでヴァイオリンの講師をしている時の生徒だったんだ。その写真のカイリはまだ五歳くらいだったかな? オーストリアで有名なコンクールに最年少で入賞した時に撮ったものだよ。ちなみにその横に写っているのが私だ」


「さ、最年少……」


 大人の中に混じっても臆することなく凛としている御堂の姿が目に浮かぶ。


「カイリ以外の出場者はみんな凄腕の大人でね、そんな中でもカイリは賞を取ったんだ。でも、あまり嬉しそうじゃないだろう?」


 満面の笑顔の石田に反して、写真の中のカイリは不機嫌そうにムスっとしている。


「自分の納得のいく演奏ができなかったからって、入賞したのにいっちょまえに不貞腐れてたんだよ。小さい頃からプライドばっかり高い子だったから……。私は特にその写真が好きでずっと飾ってるんだけど、カイリにはいつもそんな古臭いものとっとと捨てろって言われてしまうんだ」


 病人とは思えないほど、石田は久しぶりの来客に笑いながら饒舌に語った。