とろける恋のヴィブラート

 石田修二――。


 プレートにそう名前の書かれた個室の前で、奏は一度深呼吸をしてノックをした。


「はい」


 けして若くはないが、はっきりとした返事が返ってくると、奏はドアを開けてペコリと頭を下げた。


「失礼します。私――」


「あぁ、話はカイリから聞いてるよ。ベルンフリートの事務所の方だろう?」


 白髪まじりの老人がベッドの上でにっこりと笑って奏を出迎えた。


「はい。青山奏と申します」


「え……? 青山……そうか、君だったのか。いやいや、何でもないよ、あんまりしゃべりすぎるとカイリに怒られてしまうからね」


 意味深なことを言いながら石田が小さく笑うと、奏もにこりと笑い返した。