とろける恋のヴィブラート

「御堂さん、楽譜は?」


「俺に弾けない楽譜はない。リストは確認したからもう必要ない」


「え? せっかく持ってきたのに……もう! それと御堂さん、昨日八時にって自分で言ってましたよね? 今度からちゃんと時間には起きてるように――ぶっ!」


 奏が文句を言いながら小走りに歩いていると、急に御堂が立ち止まって弾みで顔面を背中にぶつける。


「だからお前にカードキー渡しただろ」


「確かにお預かりしましたけど、いきなり部屋に入ってこられたら誰だって嫌じゃないですか」


「……別に、勝手に入ってくればいい」


 御堂は肩越しに振り向いて、冷めた目で奏を見下ろすと、そのままスタスタと玄関へ向かって行った――。