とろける恋のヴィブラート

「あの下手クソなピアノはお前だったのか……」


「なっ、ななな……! い、今なんて?」


「お前、下手くそなピアノのうえに耳も悪いのか?」


 何度も何度も耳を疑った。自分のピアノを侮辱された経験のなかった奏は、真っ赤になって口をパクパクさせながら、床に散った楽譜をわさわさと掻き集めて、逃げるようにその場から走り去った――。