とろける恋のヴィブラート

『ごめん、それでもいいから付き合って欲しいって言ったのは僕だったね』


 柴野が力なく笑う声が小さく聞こえた。


「柴野さん……」


 柴野の優しい声音にぎゅっと胸が締め付けられる思いがした。


『そうだよな、新しい仕事にどんどん挑戦していくのもいいかもしれない。ほんの複雑な男心ってやつだよ、僕が言ったことで気に障ったら悪かった』


「い、いえ……でも、本当に私、仕事以外では御堂さんと関わったりしてないし――」


『関わってもらっちゃ困るな』


 釘を刺すような低い声が、奏をビクリとさせる。顔を見ていなくとも、心穏やかでないオーラが伝わってくる。


『あぁ、もうこんな時間か……すまない、くだらない事で電話したりして』


「いえ、そんな事ないです」


『社長から聞いたけど、早速明日から御堂のところへ行くんだろう? 寝坊しないようにな。また連絡するよ』


 それとなく穏便に電話を切ると、奏は長いため息をついた。