とろける恋のヴィブラート

 あの時、コンクールが終わって失意に暮れる自分に、冷たく言い放たれたあの言葉が奏の脳裏に蘇る。


「や……いや……」


 コンクールで演奏中に何度も失敗した。その時のどよめきが今にも聞こえてきそうで奏は耳を塞いだ。


 奏の演奏家としての致命的な欠点――。


 それは、大勢の目の前で演奏すると極度に緊張してしまい、演奏に集中できなくなってしまうことだった。