とろける恋のヴィブラート

「そ、そんな条件にあてはまる社員……うちには――」


「俺が選んだのはお前だ」


「……はぁ!?」


 いつの間にか壁際に追い詰められて、奏は身を翻して応接室から飛び出すこともできなくなってしまった。


 背中に壁の冷たい感触が伝わって身体が震えそうになる。


「だって……御堂さん、私のピアノは下手くそだって言ったじゃないですか」


「お前のピアノは音を失ってるだけだ。五年前からな」


「っ!?」


 奏は、御堂の言葉に目を見開いた。