とろける恋のヴィブラート

 社長が部屋を後にし、御堂と奏の二人きりの空間になる。しばらくの沈黙のあと、御堂が口を開いた。


「オーストリアから帰国する前から、俺は野宮社長にスカウトされていた」


(そういえば、柴野さんがそんなこと言ってたような……)


 奏は、前に柴野が言っていたことをふと思い出した。


「フリーとかどっかの事務所に所属するとか、はっきり言って俺は興味ない。祖父が創立したベルンフリートの事務所なんて別にどうでもいい」


「……へ?」


(無関心にも程があるんじゃ……)