とろける恋のヴィブラート

「柴野さん、すみません。お待たせしました」


 息せき切ってロビーへ行くと、にこりと笑ってコーヒーを飲みながらソファで寛ぐ柴野の姿があった。パリッと着こなしたスーツ姿の柴野は傍から見てもかっこいい。


「お疲れさま、僕もさっき会議が終わったところなんだ。タイミング的にはちょうどよかった」


「そうだったんですか、じゃあ柴野さんもお疲れなんじゃ……」


「疲れてても、奏を迎えに行くのはまた別だよ」


 柴野の爽やかな笑顔に奏の心が和らいでいく。


 これで、自分に課せられた使命は結果はどうあれ終わったのだ。そう思うと、奏はなんとなく心残りな気がした。


(もう御堂さんと会うこともない……よね?)