とろける恋のヴィブラート

(イライラしててもしょうがない……全部、私の力不足なんだから)


 “己の未熟さを受け入れることも、上達につながる”と、奏は失敗した時にいつも自分にそう言い聞かせていた。けれど、情けなさと悔しさがこみあげてきて、奏の視界が熱いものでぼやけ始めた。


「っ……」


 まだ何か言いたげな目の前の中年社長に急いでぺこりと頭を下げると、今にもこぼれ落ちそうな涙を抑えてホールを飛び出した――。