とろける恋のヴィブラート

 それでもなんとか持ち直すも、一度つまづいてしまうと指が震えて思うように音が出せなかった。何度も何度も御堂のヴァイオリンにフォローされて、旋律を修正されるのがわかる。


(やっぱり私、だめだった……)



 ――君は才能があるのに、演奏家としては致命的な欠点を持っているね……残念だよ。



 真っ白になっていく頭の中で、ぐるぐるとあの時の言葉が回っていた。


 演奏は身も心も一体とならなければならないのに、奏は抜け殻となった身体を誰かに操作されているような感覚に囚われた。


(私なんかが弾いちゃ……だめだったんだ)


 奏は吸い込まれるように、真っ暗闇でどろどろとした奈落の底へ落ちていった――。