空の誓い、海との約束

「そのくらいにしとけ」

 背筋がぞくりとした。命令するように言ったのは、ランディの声だったから。

「いいか、死刑囚。陛下に告げ口してみろ、二度と目が覚めないようにしてやるからな」

 壁に何かを叩き付ける音がした後、王宮警備の制服を着た人達が十数人出て行った。一番最後に出てきたのはランディだった。

 ……ひどい。どうして、こんなことをするの?

 恐怖の後にこみ上げてきたのは怒りだった。

 彼らが居なくなったのを見届けてから、私は恐る恐る倉庫の中を覗いた。そして、息を呑んだ。

 壁にもたれるような格好でリフが気を失っていた。そばに寄っても声を掛けても目を覚まさなかった。血で汚れたぼろぼろの姿に、死んでしまったかと思った。

 ハンカチに包んだ花を彼の傍らに取り落としたまま、私は必死に走った。誰でも良いから呼ばないと、彼が死んでしまう気がして。

『生きる値打ちもねぇ人殺し』

 ひどいよ。どうして、そんなこと言うの?

 何とか庭師を見つけて倉庫へ連れて行った時、既に彼の姿は無かった。彼が居た場所のすぐ横に、散らばっていたはずの花が丁寧に包み直されて置いてあった。



 
 海色の瞳をした、笑わない見知らぬ人。

『てめえが生きてること自体おかしいんだよ』

 彼が笑わない理由が、少しだけ分かった気がした。