その後も何回かお父様のそばに控えているのを見たけれど、やっぱり笑わない人だった。立ち居振る舞いは綺麗だけれど、何を考えているのか分からない。
笑わない、喋らない、表情が無い。
怖い人という印象を決定付けたのは、満月の夜にあった一件だ。
私は夕食の後、書庫で絵本を読んでいるうちに眠ってしまった。目が覚めた時、湯浴みの時間をとっくに過ぎていたので、慌てて部屋に戻ろうと近道の階段に向かった。
と、聞こえてきた声。
「よお、死刑囚」
驚いて、思わず陰に隠れた。下の踊り場から聞こえてきたのは、ランディの声だった。
「おっと、失礼。今は陛下御抱えの諜報員だったな」
普段のランディからは想像が付かない嫌味っぽい口調。嘲る様な笑い方。
一体誰と話しているんだろう。恐る恐る下を覗いてみた。
後ろ姿のランディと踊り場で向かい合っているのは、無表情な彼だった。



