空の誓い、海との約束

「どういう意味だ」

 僕が答えるより先に父上が口を挟んだ。懸念していた事が起きたと言う感じだ。

 ダグラスは動じることなく、父上に答える。

「申し上げた通りの意味でございます、国王陛下。シエル殿下には、言動の一つから生死に関わる事まで、御自身に関する一切の権利を放棄していただきます」

「生死……?」

 ずっと俯いていた母上が小声で問いかけた。聞き逃すことなく、ダグラスは丁重に返答する。

「その通りでございます、妃殿下。エミリア女王陛下の伴侶としてお迎えするに際し、我が国は、シエル殿下から全ての自由と全ての権利を剥奪致します」

 広間がざわつきだす。一瞬、母上と目が合った。不安そうな瞳。すぐに逸らされてしまったけれど。

「つまり、種馬として身売りしろって事か」

「自由を剥奪って……婿というより家畜か奴隷の扱いだな」

「結局、生かすも殺すもレシュノルティアの思うまま、って言いたいんだろう」

 兄達の囁きを聞いて、父上は怒りの篭った声でダグラスに怒鳴った。

「何という事を……我が王家をこけにしているのか!」

「ペルビアナ国王陛下」

 冷静かつ威厳のある声が響いた。囁き声がぴたりと止まる。

「私共はシエル殿下にお尋ねしております」

 返す言葉を失った父上は僕を睨む。ダグラスは僕を見据える。