文久三年、十二月。徳川幕府が治める江戸の世は、今まさに大きな変化の一途を辿っていた。黒船の来航に開国、異国の様々な文化…。ほかにもいろんな新しいものがこの国を駆け巡っていた。                                        そんな中、特に治安の悪いとされる京の都には壬生狼とも恐れられている最強の自警集団がいた。                                        その名を『新撰組』。会津中将お預かりの京の町きっての武闘派集団だ。そんな彼らによってこの街は不逞浪士から守られていた。不逞浪士とは京の治安を乱す、いわばチンピラのようなもの。所詮は武士のまがい物の様な者たちだ。                     そして私は今まさに、この不逞浪士に絡まれていた。                                                            「おいおい小僧!てめえガキのくせに立派な刀もってるじゃねえかよ」          「貴様、我らをだれと心得ている!我らは勤皇の志士であるぞ!それは国のために我らが使ってやるから、さっさとよこせ!』                                                                     「い、いやです!これは父がくれた大事な刀なんです!絶対に渡しません!」                                                 「貴様、勤皇の志士に楯突くつもりか!無礼な!」                                                             「だったら、力ずくで奪うまでだな・・・」                                                                「いや、やめてください!」                                                                       浪士が刀を抜き私に斬りかかろうとした、その時。                                                             『ザシュッ!』                                                                             浪士の一人が、刀で胸を貫かれていた。                                                                  「き、貴様ら、その羽織は…新撰組か!」                                                                 (え、新撰組・・・?)                                                                         つい閉じてしまった瞼を開けると、浅葱色の羽織を着た青年が立っていた。青年は目にもとまらぬ速さで浪士の喉を貫き、返り血をその羽織にたっぷりと浴びた。浪士を絶命させた後、ふと青年が私の方へくるりと振り返る。                                                                  「ひっ・・・・・・!」                                                                         
私は青年を見て、つい恐怖で後ろに一歩後ずさった。                  表情にこそ出てはいないが、彼の瞳には光がなかった。あるのは、血に飢えた獣のような静かな狂気だけだった。                                 ふと、青年が口を開けた。                                                                        「ねえ君、君は女の子ですよね?今何の刻かわかっているんですか?女の子がこんな時に外を 出歩けば、不逞浪士に絡まれてもおかしくありませんよ。男装をしてるようですが、そんな 下手くそな男装…あのままだと君は、女とばれて襲われるのが筋でしたよ」                                                 「あ・・・あの、ありがとうございました」                                                                私がその場を急いで立ち去ろうとすると、後ろ首に鋭い痛みが走った。                                                    「悪いですけど、あなたをこのまま逃がすわけにはいかないんでね」                                                     後ろ首を手刀で打たれ、私はそのまま意識を失っていった。                                                                                                                                                                                                                                 これが『新撰組』そして『沖田総司』との出会いだった・・・・・