「申し訳ありません、早とちりでしたね」




「俺を殺す気か」




危うく撲殺されかねなかった、あの後慌てて事情を説明すれば彼女は安堵する表情を見せた。




「それにしても....如何したのですかこれは」




血が染みた隊服をちょいちょいと引っ張ってくる。ああ面倒だ、この女、また殺したのかと文句をたれてくるに違いない。




「お前には関係のないことだ」




突き放せば「....そうですか」と俯く。その瞳が以前自分に向けられていた怒りではなく悲しみに見えたのは気のせいだろうか。




「....馬鹿か俺は」

「?」

「独り言だ」




ほんの少しでも彼女が「心配」してくれたのではないかと思った自分が馬鹿馬鹿しい。




――総司や斎藤にほだされるななんて言える立場じゃねぇな。




とうとうトチ狂ったかと自嘲気味に笑みを浮かべる。様子がおかしいと首を傾げる目の前の彼女に土方は隊服の羽織を脱いで渡した。




浅葱色の、だんだら模様の羽織。




「お前の手を汚すようで悪いが綺麗にして欲しい」




血にまみれた隊服を洗濯させるなど今までにもあったというのに

口から勝手に言葉が紡がれた。




受け取った彼女はジッと土方を見たかと思えばフワリと微笑む。




「もちろんです」




ほだされるのも、悪くはないかと思ってしまった。