「あ....嫌だ、嫌です!
お願いです!殺さないで!芹沢さん!嫌です!」




喉が裂けそうだ。
それ以上に私の心が裂けそうだ。




お願いします、お願いします、何度も懇願した。しかし土方さんの顔には迷いがない。
だから尚更私は声を張り上げた。




せめて、隊士が起きてくれれば。
そう願って声を出し続けた。




「嫌です!嫌!芹沢さん!お話したいことが沢山あるんです!」




私の思いとは裏腹に雨脚は強くなるばかりで、声がかき消される。




「総司、黙らせろ」




「....はぁい」




この場に似合わない間の抜けた返事。
きっと暗殺なんて慣れているのだろう。

幾度も困難をくぐりぬけてきて鋼の精神でも出来上がったのだろう。




壬生の狼。




確かにこの人達に相応しい二つ名だ。
私は結局表面しか見ていなかった。




ここへ来るときにあれ程泣いたというのに、私の目からはまた涙が溢れる。




「お願いします!お願いします!おねが」




「君、黙ってくれない?」




男の人特有の大きくてゴツゴツした手で口を塞がれる。黙らせろ、と土方さんは言った。
私は殺されるのだろうか。




――でも、私が死ねば芹沢さんの枷がなくなる。




そう考えついた瞬間、心がひどく落ち着いた。腹を括り目を瞑る。




なのに、




「その娘には手を出すな、後生だ」




あなたはどうして私を守るのだろう。