「あの~すみません……!」


突如雷鳴を静めるように、声は足音と共に響いた。

一点に集まる一同の視線。

その先には、皺の出来たハンカチで額を拭う小太りの男性が、赤いネクタイを締めたスーツ姿でおずおずと立っている。


「リョウヤ、その辺で慎んでおけ」

「りょーかいっす」


サッと前にでた山城は、さらに一段と表情を整え、いかにも社長を思わせる真剣な眼差しで目の前の来客を見た。

今までの騒々しさも忘れてしまうような、静寂。

ピリリと引き締まったその空気に、漸く恭介は“これが本物なんだ”と気付かされる。