咲希はまだ1歳になっていない。
そんな小さな咲希を会ったことのない知らないおばさんに預けたくなかった。
父さんも母さんもお姉さんたちとは仲が悪く、俺らを決しておばさんたちに会わせようとしなかった。
会わない方が良い、といつも言われていた。
「このままじゃ埒があかない。
硅午だっけ、はアタシの方へおいで」
そう言ったのは父さんの姉・達子おばさんの夫婦の家だった。
「じゃ、この赤ん坊はアタシたちが」
母さんの姉・真知子おばさんが咲希を引き取る。
「嫌です!僕、咲希と行きたいです!」
「うるさい子だね。さっさとついておいで」
「嫌だ!咲希!咲希!咲希!!」
「・・・にーちゃ」
俺が咲希の顔を見て、咲希の声を聞いたのはこれが最後だ。


