「洗っておきなさい」
おばさんに言われ、素直に頷く。
キッチンへ向かい、鍋を洗う。
「これで拭きなさい」
渡されたタオルを、すぐには受け取れなかった。
タオルは黒ずんでいるが、明らかにこれは母さんが宝物だと言っていた父さんからもらったハンカチだ。
「何グズグズしてんの。とろいわね」
おばさんは俺の手から鍋を取り、ハンカチで拭く。
「汚くなったわ」
そして、乱暴にごみ箱へ投げ捨てた。
俺は全ての食器を洗い終え、部屋へ向かう。
「・・・くそっ」
「なーに怒ってんの。馬鹿ね」
秀美の笑い声が響く。
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