女の子が生まれたらお揃いの物を持ちたいと言っていた母さんの夢が叶えられるので、
俺は母さんに内緒でこっそり髪留めを買ったのだ。
それを、この女が使っている。
「返して。それは母さんと咲希にあげるものだ」
母さんのいない今、咲希に2つともあげようとした。
「やーよ。これはアタシの。
それとも何?アタシに逆らうの?
アタシに逆らうと、あんたこの家で住めないよ。
アタシはあんたの妹の家なんて知らないし」
確かにそうだ。
俺は真知子おばさんから咲希の居場所を教えてもらっていない。
会いに行けないのだ。
「素直にアタシの言うこと聞けばいいのよ」
「秀美(ひでみ)ー。御飯よー」
「はーい。今行く」
秀美という名前の女が出て行く直前、俺を見た。


