バニラ

あの時無理矢理了承させられたデートに、
お店閉めて和臣さんたら付いてきちゃって、
その上、手を、
手を握って離さないんだもの~

「あの、和臣さんその手が……」

「ん?何?」

悪戯そうな笑みで返されて、
言葉を失ってしまった。

「い……いえ」

わざとだ、
わざと挑発してるんだ。


『やっぱり、徹さんは大事な常連さんだから行きます。』

と言った私に対する当てつけに違いない。

なんとも言えない雰囲気を破る様に、

あははっ

と声をあげて笑って

席を立ったのは徹さんだった。

「ヤキモチとか、やくんだね和さんも。

 もう判ったから、

 からかって俺が悪かったって。

 感謝してよね、二人があんまりじれったいから、

 はっぱ掛けてあげただけだから、

 まあ、あわよくばってのもあったけど?」

何?何なの?

徹さんを見上げると、

優しい顔で、あたしを見つめてから、

「初めから二人の気持ちは分かってやったことだから。

 早く、くっついたらいいんだよ。」

そう言って私の軽く肩を叩いた。


「じゃあ、俺行くし。」

「徹さん!」

背を向けた徹さんに、

声をかける私の手をつないだままグイッと引っ張った和臣さんは、

「大丈夫だから」

と囁いた。