涙目になりかけたその時。



「俺が取ってやるよ」



甘い香りが横を通り過ぎた。


見覚えのある男の子がブレザーを私に「持ってて」と投げあわててキャッチ。


同じ学校のブレザーだ。


ワイシャツを雑にめくって木登り開始。素早く上に登っていく彼。


すごい。



「ほらよ」



少年たちにサッカーボールを投げる彼。



「ありがとうございます!」



少年たちの瞳が一瞬でキラキラした。


それを満足そうに見下ろしながら得意げに笑う木の上の男の子。


あの人は確か…



「高木裕太郎くん…?」



たかぎゆうたろうくん。