こんなとき、乙女ゲームの選択肢のひとつでも思いつけばよかったんだろうに。 「………ごめんなさいっ!」 気付いた、ときには。 普段の3倍くらいの声を出している私がいた。 朔哉サマの顔は、ほんと目と鼻の先くらい。 少しでも動いたら、触れてしまうんじゃないかと思う。 私の声と共に彼の動きも止まり、保健室のこの一空間だけ時間が止まったように感じた。 彼の胸を少し押す。 この距離じゃ、話すらできない。