「田村アナだってそう、目に見える表向きの世界なんて嘘ばっか。ほら?」
そのまま何かされるんじゃないかと思っていたあたしをベッドに置いたまま、社長はベッド脇に立ててあったA4サイズの封筒を取り出すとあたしに見せた。
それは来週発売の週刊誌で、社長がグラビアアイドルと密会しているという見出しが表紙に踊っている。
「た、大変じゃないですか!」
「だから、嘘ばっかだっての。俺このグラビアアイドル会ったことすらないから」
「……そうなんですか。それなら」
「訴えないのか?って思ったろ」
「はい」
「甘い砂糖の一粒を簡単にアリが見つけるように、金のある所には群がるのが奴ら。載せてほしくなかったら金払えって言うのは分かってる。だから、好きにしろって言って終わり」
「でもそれじゃ……」
私たちの会社の社長が、勝手な報道でイメージを落とされるのは癪にさわる。
「ブログで反撃するから心配するな」
慣れたように言いながら、社長はあたしの頭を撫でた。
心地よさにうっとりしてしまいそうだけど、片付けの途中だったことを思い出し、我に返る。
「私……そろそろ機材を戻してきます」
普段はつかないイレギュラーの業務は、手際も悪くなりがち。
その手を離そうとしたあたしを、社長はもう一度やんわりと抱きしめた。
そうされてしまったら、あたしにはもう、抵抗の術はない。

