好き勝手に揉まれながら、緊張した時間を少し崩そうと、あたしは社長を見上げ、今日一日気になっていた事を聞いてみた。


「あの、田村アナウンサーって、カメラが回っていると全然雰囲気が違うんですね」


先程までここにいた田村アナウンサーはフリーのアナウンサーで、インターネットTVなとでは有名な美人キャスターである。


カメラの前では社長とのかけあいも軽快に、笑顔を絶やさなかった彼女が、仕事が終わった途端に電池の切れた人形のようになってしまったのだ。


ちなみに撮影スタート時は違う仕事をしていた為、そもそもの状態をあたしは知らない。


「一緒の現場初めてだっけ?」


「はい」


「じゃあ驚くよなー。ちょっと精神的に不安定な所があって、それで局での仕事は受けなくなったらしい」


なるほど。


どうしてスタジオをレンタルして撮影しないのかと思ったら、田村アナへの配慮だったのかもしれない。


薄幸の美人アナに、社長は何を感じているのだろう。


少なくとも優しい配慮があることは確かだ。


とその時、


「社長……!?」


突然あたしの体を持ち上げたのは二つの手。


スマートな身体のどこにこんな力があったというのか。
お姫様だっこ状態になったあたしが、少しでも軽く思われたい乙女心で首元に抱きつくと、社長はくすりと笑った。


ついた先は、隣の部屋のベッドの上。