なんとなくそんな気がした。

突然、好きだと言ってきたり、キスしようとしたり。

怜央には不似合いなDVDを置いていったり。


帰り際に言った――
『麻衣は、きっとオレのことが必要になると思うよ』っていう、あの意味深なセリフだって。


怜央はもしかしたら、あたしが近いうちに失恋するってわかってたんじゃないだろうか。


「うん……知ってた」


怜央は苦しそうに眉を寄せ、あたしの右手を自分の左手でギュッと握り締めた。


「バイト先に、西村が女連れで来たんだ。ふたりの雰囲気から、そうなんだろうなって思った。まぁあいつはオレのことには気づいてなかったみたいだけど」

「そうだったんだ……」

「ごめんな。黙っておくのが正しかったのか……今も、オレ、わからない」


ううん、とあたしは首を横にふる。


「怜央が謝るようなことじゃないよ。気遣ってくれてありがとう」


怜央は怜央でひとりで抱え込んで迷っていたんだろうな。


「オレ、ほんとは、あの時に言おうとしてたんだ」

「あの時?」

「引越し手伝いに来た日」


その瞬間、あたしの中で、怜央の言葉が思い出された。


『今まで黙ってたけど、言わなきゃいけないことがあるんだ』


あの時、妙に真剣な表情で、そう話を切り出した怜央。

あれは太一のことを話そうとしてたの?