「そうだ。入浴剤入れようかな」


この前アロマショップで買った入浴剤を手に取る。

フローラル系のオイルが配合されているとのことで、店員さんから勧められたのだ。


「どんな香りだっけ?」


そう思って、蓋を開け、ボトルに鼻を近づけた瞬間。

突如頭の中にあの光景が蘇ってくる。


太一とあの女の子が腕を組んでいる。幸せそうなふたりの顔が……。


どうして?

数秒考えてから気づく。

ああ……そうか。似ているんだ、彼女がつけていた香水の香りに……。


「うぇ……」


胃液が上がってくる。

あたしは慌ててバスルームのトイレの蓋を開ける。


だけど、ほとんど食べていないあたしの中からは何も出てこなかった。

ギューって胃が締め付けられるような感覚。

胃液のせいで喉の奥が焼け付くようにヒリヒリする。


はぁはぁ……と荒い息が口から出る。


呼吸が落ち着くのを待って、それからゆっくりと立ち上がった。