次の日、学校に着いたのが8時10分、ちょっと早めだ。
玄関に入り、靴箱を見る。

「ん—? 何だ?」
と、靴箱に異変を感じた。

調べてみると、何かある。
取り出して見ると、何かしら書かれた手紙のようだ。
「まさか、ラブレター?」

少し戸惑いを感じつつも、手紙を開けてみる。

『菊池さん、受験の時に、私が落としたハンカチを拾ってくれたのを覚えていますか? 私は伊尾谷 樹理と言います。少しお話もしましたね、その時からなんて優しい人なんだろうとゆう印象を受けました。 今の私の気持ち、伝えたいと思います。4月7日の今日放課後、4時10分に駐輪場で会いましょう。待っています。』

この文章を読む限りラブレターだ。

普通の男子ならここで喜ぶだろう。

しかし、俺は違った。

無表情で必死に記憶を探っているからだ。
「ハンカチを拾ったのは覚えているが…、顔が思い出せん。」

何度も思い出そうと試みるが、思い浮かばなかった。

「まぁいいか、どうせ会うんだから。」
そうこうしているうちに、玄関から佐々木が来た。

「おーっす,きっくー、何だその顔は。 笑顔が抜けてるぞ。」

佐々木は相変わらず元気だ。
とりあえず佐々木にラブレターの事情を聞いてもらおうと思った、が、佐々木の方が早かった。

「何だその手紙! またラブレターか?
 中学の時から変わんねーな」

「うるせー、余計なお世話だ。 女子をフるのもしんどいんだぜ?」

もちろん、俺はこの人のことは知らないし、嫌いじゃなければ好きでもない。

「なぁきっくぅー、俺にも見せろよ。」
と、俺から手紙を奪い取るとニヤニヤしながらその手紙を読む。
すると、佐々木が急に顔をしかめた。

そしてこちらを振り向くと真剣な顔で聞いてきた。

「今日、何月何日だ?」
その問いについて、左手首の腕時計に書いてある日付を見ながら答えた。

「えっと、4月8日だけど………あっ!」
その時、自分に失望感と罪悪感が押し寄せた。

「うわ~、これ昨日のラブレターじゃねーか、きっくーひでー」

「これ俺のせいか!?」