花音「あの、奏人さん…本当にありがとうございました!」
奏人「あぁ。」
花音「よかったら、弾いてもらえませんか?ヴァイオリン。」
奏人「…悪いが、弾く気はない。」
花音「そうですか…」
奏人「…実はさ、もう俺自分のヴァイオリンの演奏に自信がないんだ。
俺にはヴァイオリンは向いてないんだよ。」
花音「それは違うんじゃないですか?」
奏人「え?」
花音「奏人さんはヴァイオリンは好きですか?」
奏人「まぁな」
花音「なら、いいじゃないですか。
音楽は音を楽しむものですし、好きならそれでいいじゃないですか。
奏人さんにヴァイオリンがむいてないってことはないと思います。」
奏人「でもな、俺がどんなにヴァイオリンのことが好きでも、ヴァイオリンが俺のことを選んでくれなかった…。
上手い人は他にもたくさんいるし、俺はもうヴァイオリンは弾かない。」
花音「ヴァイオリンが選んでくれなかった…違いますよ。奏人さんが本気でヴァイオリンに向き合ってないだけなんじゃないですか?奏人さんは、ヴァイオリンはただの楽器と思ってませんか?
本気でヴァイオリンが好きな人は、
ヴァイオリンは家族のような存在であるはずです。」
奏人「家族…か。」
花音「ちなみに私はピアノは家族だと思っています。血がつながってないから家族じゃないっていうのは違うと思います。
たしかに、上手い人はたくさんいるとおもいます。でも、奏人さんも本気でヴァイオリン向き合って、もっともっと好きになればいいんだと思います。」
奏人「…そうだな、俺はヴァイオリンから逃げてただけだったのかな。よし、また習うことはできないだろうけど、自分で頑張って練習して、向き合ってみるよ。
花音、本当にありがとな。」

え…今、名前で呼ばれた…?
今までは楽音寺だったのに…
花音「いえいえ、こちらこそです!
いつか、一緒に演奏出来るといいですね!」
奏人さんとの演奏…楽しみにしてますね。
奏人「…そうだな。あと、気になってたんだけど…」
花音「はい?」
奏人「なんで楽音寺は敬語なんだ?タメの時もあるけど」
花音「あ…いや、別に深い意味はないんですが…私は小学校の時から友達が少なくて先生などの年上の方などとしか話す機会がなくて、いつの間にか誰に対しても敬語が多くなっちゃったんですよね…」
奏人「そうだったんか。なら、俺の前や愛乃山の前ではタメで話してくれない?あと、奏人でいいから。」
花音「はい…じゃなくて…うん!奏人君!」
奏人「ふふ。じゃあ俺は部活行かなきゃ。部活終わったらちゃんとヴァイオリン練習して、今度聴かせてやるから。
じゃあな!」
花音「楽しみにしてる!バイバイ…。」
そして奏人君は教室を出た。