―1-Aにて。
先生「音楽の横山先生から、3年生の卒業式で校歌の伴奏者を決めてほしいそうなんですが、伴奏したい人いますか?」
花音「はい。」
先生「…では、1-Aからは花音さんを立候補します。花音さんは今日の昼休みに音楽室へ行き、横山先生の所に行ってください。以上です。」
花音「わかりました。ありがとうございます。」
伴奏は私の得意中の得意。選ばれるように頑張りたい。


―昼休み。
ガラガラッ
先生「…これで全員揃いましたね。
これから卒業式の伴奏者を決めたいと思います。では、順番に一回ずつ校歌を弾いてください。まずは1-Aの楽音寺花音さんからお願いします。」
花音「はい…」

そして、弾き終わった。
ミスタッチはひとつもなかった。
先生「とても良いですね。次はB組の美恋さんお願いします。」
美恋「はい。」

そして、美恋ちゃんの演奏が終わった。
完璧すぎる伴奏に、聞き惚れてしまった。
先生「すばらしい…完璧と言える様な伴奏でした。次はC組の…」
本当にすごかった。
私なんかの演奏と全然違う。
まさに“楽譜通り”の完璧な伴奏だった。
将来、美恋ちゃんがピアニストとなって演奏している姿が目に浮かぶ程だ。

―あっという間に全クラスの演奏が終わった。
…ついに伴奏者が決まる。
私は、もう絶対美恋ちゃんが伴奏をすると思っていた。
その美恋ちゃんは相変わらずずっと真顔。
何を考えてるのか全然わからないや。
先生「では、伴奏者を発表します。
1-B、水野美恋さん。お願いします。」
やっぱり、予想通りだった。
あんな完璧な演奏に勝てるはずがない。
今日は結構調子が良かったほうだったが、美恋ちゃんの演奏とは差があった。
私の得意な校歌で負けるなんて…
しかも、伴奏者と決まっても美恋ちゃんは喜ぶ素振りは見せず、ありがとうございますと残したまま即時に音楽室を後にした。