ある人の花

「じゃあ行ってくるね。」

「今日は迎えに来てるんでしょ?顔みたい!」

「あぁ、じゃあ外まで見送るフリして。」

「うん。」


「紗藍さん。」

「ク代理。」

「そちらは?」

「親友の花音です。」

「あぁ。はじめまして。」

「はじめまして。紗藍、行ってらっしゃい。」

「うん、行ってくるね。」



「お友達、優しそうでしたね。」

「ええ。家族みたいな、当たり前の存在なんです。」

「いいですね。紗藍さん、花音さんといる時とても表情が落ち着いてますね。素敵です。」

「そうですか…//?」

「はい。」

ちょっと待って。
そういうこと言われるとすごい恥ずかしい。
絶対顔赤いよね、これ。

ばれてないかな?


「…」

「ん?どうかしました?忘れ物?」

なんでこんなとこで車止めるの?

「…紗藍さん。」

「え?」

「…」

顔…近づいてない?

「え…ちょっ…」

「…」

「ん…」

これって…夢?
夢にしてはリアルすぎるよね。
ク代理…だよね?
なんでキスしてるの?
ク代理は…私のことが好きなの?
そうなの?

「んん…」

「…すみません。」

「…」

「大丈夫?」

「…はい。」

「…」

「どうして…?」

「…」

「…好き…ですか?私のこと。」

「え?」

「好きですか?」

「…」

「…はぁ…」

あぁ、もうどうしよう!
なんでこんなこと聞いてんの?
バカみたい。
好きになってくれたら…すごい幸せだけど。
好きになってくれなくても、少しでも距離が縮まればいい。そう思ってたのに。
でもね。中途半端な気持ちでキスとか、受け入れられないんだよね。
いくら好きでも。

「好きですよ。」

「…え?」

「辛い過去があるって知った時、その過去を忘れさせてあげたいって思いました。いや。忘れてほしいと思ったんです。あの男のために泣かないで。もし泣きたくなったら僕に言ってください。いつでもそばにいます。できれば、ずっとその笑顔を見ていたいんですけどね。」

「ク代理。」

「中途半端な気持ちでキスしたのではありません。過去があるから…そう質問したいのもわかります。」

「…ごめんなさい。変なこと聞いて。」

「いいんです。」

「…」

「うーん…大丈夫かな?いや…我慢しないと。」

「え?何か言いました?」

独り言…?よく聞こえなかった。

「…いや。行こうか。」

ク代理はフッと少し笑ってからそう言った。

「はい。」