「まったく喋るな、とは言わない。けど、仕事なんだ。遊びに来てるわけではないんだ。だから……」
「主任は、葉子が好きなんですか」
「なぜ、そうなるんだ」

話の途中だったが、結衣は耐えられなくなり、口を挟んだ。

徹は結衣の言葉に、更にゲンナリとした顔をした。

「ちょ、ちょっと結衣!?なに、言ってるのよ!」

結衣と徹の会話に、周りは「なになに!?」とチラチラ見ていて、葉子も慌てて会話に飛び込んだ。

「だっていつも、葉子とわたしを比べてるじゃないですか。主任もキレイで仕事の出来る女性がお好きなんですね」
「はぁ、バカバカしい」

徹は、わざとらしく盛大な溜め息を吐くと、自分のデスクに戻った。

「……っ」

結衣は今にも泣き出しそうな涙を堪えると、無言でパソコンに向き合った。

「結衣」

葉子の問いかけにも一切答えることなく、ひたすらキーボードを打ち続けた。

それは定時を過ぎても、ずっと……。