笑わないオトコ【短】

「笑って、くれないか」
「……はいっ」

徹の言葉に涙目になりながらも、ニコリと目を細め結衣は微笑んだ。

「……ありがとう」
「……っ!!」

徹は今まで見せたことのない笑顔を見せると、ためらいながらも結衣を抱き寄せた。

「さっきから思ってたんだが…。お前、イイ匂いするな」
「欲情しました?」
「アホ」

徹の“アホ”に結衣は、盛大に吹き出した。

「主任っ、今度わたしとゴハン行ってくれますか…?」
「あぁ、行こう」
「デートは?してくれますかっ?」
「あぁ、当たり前だろう」

やっと、振り向いてくれた。

この3ヶ月諦めずに、頑張って良かった。

葉子がくれたこの香水も、後押ししてくれたのかな。

無愛想な上司だけど、自慢の彼氏です!!

「主任…」
「なんだ」
「キス、してほしいです…」
「それは断る」
「えーっ!?どうしてですか…!!」
「は、恥ずかしいだろっ」
「乙女ですか!!」
「…うるさい、黙れ」

甘い関係になるのは、まだまだ先みたいです……。



end