笑わないオトコ【短】

「しゅ、にん…?」
「……行くな」

徹は後ろから、結衣の手首を優しく握りしめた。

「今、なんて……」
「……だから、行くなと言ったんだ」

夜だというのに、徹の顔や耳までもが赤くなってるのが結衣には分かった。

「急に、どうしたんですか…?」
「……分からない。体が勝手に動いたんだ」

いつもの無愛想な上司。

だけど、いつもとは違う一面に結衣は自然と笑顔になっていた。

「……お前は、笑ってるとイイ」
「可愛いってことですかぁ~?」
「違う。勘違いするな」

やっぱり無愛想だ、と結衣はクスッと笑った。